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提供:新日本有限責任監査法人
2004年に1兆7000億円の海外からのロイヤルテイ収入を計上し,日本の特許などのロイヤリティ国際収支は2300億円の黒字となった。米国と同様,今後は技術貿易収支が黒字基調で拡大すると言われている。この背景には,円高による製品コスト競争力低下への対策としてメーカーが生産拠点のグローバル化を進めた結果,海外現地法人からのロイヤリティ受取額が増加したことがあげられる。 税務当局は,国境を越えたグループ企業間のロイヤリティ収受の漏れがないか,または,その額の適正性に強い関心を示している。グループ企業間の国境を越えた知的財産取引に対する課税調整方法の1つに移転価格課税制度がある。 無形資産の移転価格課税とは 国税庁は,2006年3月に無形資産に関する移転価格事務運営要領を一部改正し,無形資産取引に関する移転価格課税の強化を明文化した(以下に抜粋を示す)。
この無形資産の移転価格課税の意義を,中国に製造子会社を設立した場合で確認してみよう。 親会社X社は中国に100%出資の製造子会社Y社を設立し,従来は日本で製造していた製品Aを中国で製造し,米国や日本など全世界で販売することにした。X社は,製品AをY社に製造させるにあたり,工場のレイアウト,機械装置の設置,現地ワーカーのトレーニングを行った。これら子会社の設立および製品Aの製造・販売に至る一連の段階で,相当の無形資産が投入されている。具体的には,製造工程上の特許権やノウハウ,指示書・マニュアルなどの著作権,製品Aに関する特許権や意匠権などがX社からY社へ移転または使用許諾されている。 通常,これらの無形資産の使用許諾などを自社関連企業以外の第3者に対して,ライセンス料等の対価なしにその実施をすることはないと誰でも理解できるであろう。しかし,アジアなどに製造子会社を持つ日系企業の場合,100%現地子会社などに対する場合において子会社への財政支援目的や親会社による知財管理が容易であるなどの理由から使用許諾契約を締結しない場合やライセンス料に関して親子間で恣意的に設定する場合がある。 従って,グループ企業間で無形資産の使用許諾があると課税当局が判断できる場合には,無形資産の使用に関する親会社と子会社間の契約などの取り決めがない場合であっても,無形資産の使用許諾があるものとして,無形資産の独立企業間価格を課税当局が算定し,課税所得の調整を行うこととされる。なお,親子間で使用許諾契約締結されている場合であっても,そのライセンス料率などにおいて独立企業間価格の観点より適正ではないと課税当局が判断される場合についても,当局の課税修正が行われる。 独立企業間価格の算定方法は法令で定められた方法から適切な方法を選定することとされている。特に,無形資産についてはその特性から,(1)同種・同様の状況下で行われた非関連者間取引価格をベースに調製を行って算定する独立価格比準法,または,(2)国外関連者間取引の利益を利益貢献寄与度などで分割して算定する残余利益分割法が選定される傾向がある。 移転価格課税調整の事業によって生じる損失とは 移転価格課税調整の事業によって生じる損失を以下に示す。 第1に,相手国と日本との間で二重課税が発生し,利益の多くが税金として徴収されることである(例:日米間取引では,日本の法人税を40%,米国の法人税を35%とした場合,単純計算で75%の課税になる)。 第2に,この二重課税を調整するための本業以外の事業コストの発生である。企業は日本の国税庁と相手国課税庁に対して相互協議を申し出て,両国の課税当局間で二重課税の調整を図ってもらう。この相互協議において両国間の合意に至るまでに2〜3年の期間を要する。この間,経理部が中心となり対応が行われるが,無形資産取引が絡む場合には,知財部,法務部が関連事業部などとともに当局に対する無形資産取引の説明並びに提出書類の作成に関与することになる。これらの本業以外の人員コスト,外部専門家コスト,時間コストは大きい。また,制度上,相互協議における二重課税の排除がうたわれているが,実務上はこの二重課税の全額の排除が両当局間で合意に至る保証はない。特に,無形資産の評価については各課税当局とも見解の相違があるため,二重課税の全額排除には課題があると言われている。 この移転価格課税対策には文書化等の事前対策が重要である。まずは,自社グループ内部において親子会社間のロイヤリティ契約書の締結およびライセンス料の独立企業間価格について裏づけのある文書作成がなされているかどうかの確認を行う必要があろう。 |
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