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相澤 英孝氏 今,なぜ,ネット法か?



一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
相澤 英孝


 日本がネットワークの主役になるという志で,ネット法が提唱された。その背景には,今の著作権法を中心とする法制度に対する強い危機感がある。
 この危機感は,(1)ネットワークにより消費者にさまざまなコンテンツが提供され,関連する産業が発展することによって,芸術家(権利者)も含めて社会全体が豊かになるための法制度でなければならないという認識,(2)従来の文化庁を中心とする審議会方式での法制度改革のスピードでは,ネットワークの発展にとても間に合わないという認識,から生まれている。
 この認識は,インターネット等が発展しているにもかかわらず,日本の法制度は硬直的なままで,これでは,消費者が受けるべき利益を損ない,企業は圧迫され,ネットワーク・サービス産業ばかりでなく,通信産業,情報処理産業などの関連産業分野の発展を阻害され,芸術家も潤うことなく,日本はネットワーク後進国になってしまうという危機感に結びついている。
 提案されているネット法は,このような危機的現状を打開するというところに主眼があり,消費者や社会の発展よりも既得権を重視する人々からの反発があるかもしれない。しかしながら,既得権にしがみつき現状の日本の法制度を維持しても,ネットワークはどんどん発展することはとめられないし,世界の市場は外国企業に席巻された上,今は存する日本の僅かな既得権さえも,外国の企業に取って代わられるだけである。
 ネット法は,コンテンツの円滑な流通を目的としている。コンテンツを流通させるシステムがなければ,創作物により利益を十分に実現することができないので創作そのものも損なわれ,ただ違法なサービスがはびこるばかりで,消費者もコンテンツを十分に享受することができない社会になってしまう。消費者がコンテンツを楽しみ,消費者にサービスを提供する産業,そのためのシステムを提供する産業がいてこそ,芸術家も報われる社会がやってくるということがその制度理念の基礎にある。
 さらに,インターネットによる日本発のコンテンツの提供は,日本の消費者や関連産業の発展による社会の発達ばかりでなく,世界各国が日本を理解し,日本の世界における地位の向上にもつながるものである。
 現在の著作権法を中心とする法制度を改革するネット法は,これからのネットワーク社会の発展への出発点となるべきものである。その出発点に立つことさえもできなかったら,近未来のわれわれ日本の社会は,アジアの辺境の情報後進国となってしまいかねないのである。





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