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著作権法の改正への長い道のり

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
相澤 英孝

 昨年(2006年)12月に著作権法の改正が公布された。この改正は,主として,地上波のテレビ放送の全国的なデジタル化のために,いわゆる「マルチキャスト」の方式を用いることを容易にするためのもの,ということができる。したがって,この改正の内容は,放送と通信の融合といった現代的課題に応えるためのものではない,ということを指摘しておかなければならない。
 このように,改正が当面する問題の解決に限定されてしまった理由には,現在の著作権法の改正のための枠組みが,権利者の利害調整としての機能に重点が置かれて,将来へ向かって,「どのように情報の質を高め,量を増やし,情報の享有を推進し,社会的厚生を高めていくか」という著作権の基本的な精神に基づく議論が行われにくいものとなっていることがあるのではないか,と推察される。
 将来に向けて,通信と放送の融合に象徴される情報通信関連技術をさらに発展させるとともに,その技術で構築された情報網の中により多くの情報を流通させることによって,産業の発展のみならず,国民がより多くの情報を享有し,情報の豊かな快適な生活をおくることができるようにしていかなければならない。来るべき高齢化社会のなかで,高齢者が自宅で気軽にエンターテイメントを楽しめるような心優しい社会を築くことも,これからの発展の一つの方向でなくてはならない。
 そのような視点からの大きな改革のためには,既存の枠組みによる従前の延長線上の検討では難しいことは否めないことであり,著作権法の抜本的な改革をするための枠組みをも含めた改革を考えていかなければならない時期にある。

 こうした将来への展望が必要とされる時期に,著作権の保護期間の延長が模索されている,という話が聞こえてきた。著作権の保護期間を延長することがこれからの文化的創造にどのような意義を持つのか,保護期間の延長のために国民がどのような負担をしなければならなくなるのかを,考えてみる必要がある。著作権の保護期間の延長は,著作者の死後50年以上を経過した著作物の著作権者(著作者の子孫や著作権の譲受人)には,多少の利益をもたらすかもしれないが,著作物の利益を享受する国民の直接の負担を大きくするばかりではなく,著作物の流通を担うメディアの著作権の処理にかかる費用負担を大きくすることによって,その費用負担が著作物を享受する国民の負担をさらに増大させることになることを忘れてはならない。







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