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知的財産推進計画2006
−小泉内閣最後の推進計画−

一橋大学教授
相澤 英孝


 知的財産推進計画2006が6月の初めに発表された。知的財産戦略大綱以来の知的財産推進政策は,知的財産を政策重点分野とすることにより,法律学の片隅にあった知的財産法という分野に光をあてるという成果をもたらした。
 知的財産戦略大綱で掲げられた知的財産政策の根幹は知的財産法を利用した産業の発展,経済の発展にあった。知的財産政策による短期的な経済的効果の実現は難しいが,その政策は長期的な経済に影響を及ぼすことができるものと考えられる。その政策的思考そのものは理解できるところである。ただ,理論的な研究も進んでいない状況での具体的な推進計画の策定は難しく,具体的にはいくつかの法技術的な改正がなされたものの,制度そのものの根幹にかかわるような抜本的な見直しには至らず,関係者の要望の取り纏めともいうべき推進計画が策定されることにとどまった。

 具体的な政策の難しさは,大学における特許の取得・活用を政策の柱の一つにしたところにも現れている。大学の役割は,学問の自由を基礎とし,短期的利益が期待できないことから,企業が行わないような基礎的な研究を行うところにより将来における科学の基盤を築くことに大きな意義があるのであり,経済的利益を追求する制度である特許制度を活用すべきという主張がなされたことは,長期的な産業の発展と矛盾するものとなりかねない。

 関係省庁による政策の持ち込みには,計画の基本的な理念とは一致しないものもある。そもそも,産業の発展,経済の発展のための知的財産政策は,企業における技術開発投資を助長するための制度を構築することにあり,そのために特許による保護を強化することに一つの目標があったと考えられる。しかしながら,推進計画には,行政指導による特許出願の抑制という技術開発を阻害しかねない政策が盛り込まれている。

 知的財産推進計画2006は,この政策を主導し,強力な政策推進力を持った小泉内閣による最後の計画であるが,新たな具体的な政策はIPマルチキャストに限られ,それも極めて限定的なものにとどまった。小泉内閣最後の推進計画で未来が語られなかったことには心残りもあるが,この秋に誕生する新たな内閣でも,知的財産政策が重要政策の一つとして取り上げられ,将来に向かっての斬新な具体的政策推進がなされるであろうことを期待してやまない。







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