日経BP知財Awareness CIPOフォーラム ホームへ 特集 企業戦略 イベント 提言


第2回CIPOフォーラム座談会(4)
歴史の違いが生んだ日米間の商標への意識の差

[2008/11/20]


 商標権の経済価値は評価が難しい。会計基準は基本的に“取得原価主義”を採用している。同主義では,資産計上にあたっては出願など取得に伴う支出額を計上する。このため,貸借対照表上での商標権価値は実際の価値より低くなりがちである。これは日本でも米国でも同じである。日米企業間の商標に関する意識の差はどこから生まれるのか。CIPOフォーラムは商標に関する諸問題に対し,弁護士,公認会計士,弁理士といった知財の専門家が意見を述べあう座談会を開催した。そこでは,日米企業間の商標に関する意識の差を生んだ要因の1つが,産業の歴史の違いであることが指摘された。

【参加者】(50音順)
三好内外国特許事務所 芦田望美氏
西村あさひ法律事務所 岩瀬ひとみ氏
アーンストアンドヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社 (EYTAS) 大岡考亨氏
三好内外国特許事務所 鹿又弘子氏
西村あさひ法律事務所 木村剛史氏
新日本有限責任監査法人 関 大地氏


司会:一般の立場からすると,商標権の価値評価は難しいと感じる。それに対してどう考えるか。

大岡氏:確かに一般的には商標権など無形資産の価値評価は難しく感じられるかもしれないが,M&Aに伴う商標権の価値評価に関しては,手法がある程度確立している。商標を使用している商品の販売実績などのデータが入手可能であれば,価値を算定することは可能である。

鹿又氏:商標権の価値評価には多額の費用がかかると聞いている。実際はどうなのか。

大岡氏:すでに実務として浸透している株式価値評価などとは異なり,まだ商標権価値評価としての相場のようなものは存在しない。対象となる商標権の性質や工数,実際に評価する企業の規模などによっても異なるようだ。

鹿又氏:評価手法がある程度確立しているとのことだが,結果は評価者による影響が少ないということか。

大岡氏:商標権や無形資産評価の経験が豊富な評価会社であれば,評価結果に大きな違いはないだろう。なお,評価の依頼先としては,一般に監査法人やその関連会社,会計事務所などに相談することが多いであろう。

関氏:企業の中にも貸借対照表(balance sheet:B/S)に商標権を計上しているところも数多くある。しかし,会計的には,B/Sに計上される商標権の計上額は主として商標の出願費用など取得に伴う費用で,商標権そのものの経済価値を反映しているわけではない。商標権の経済価値をB/Sに反映することができるようになれば,軽視することはできないが,現行の会計基準では認められていない。企業における商標権に関する認識が低いのは,こういった点も影響しているかもしれない。

司会:経済価値で測らないのはどのような理由があるのか。

関氏:日本の会計基準には,“取得原価主義”という一般的なルールがある。簡単にいうと,「B/Sへの計上額は資産の取得に際して実際に支出した金額(取得原価)でなければならない」というものである。資産を取得原価によらず,経済価値で評価することはこの“取得原価主義”に反するため,(例外もあるが)基本的には現行会計基準上は認められていない。商標権の会計上の評価に限って言えば,米国でも基本的には同じ考え方である。
 例えば,商標(ブランド)は一般的には“製品ブランド”と“企業ブランド”2つに分類できるが,このうち企業ブランドの経済価値をB/Sに計上することは会計的には極めて困難であろう。企業ブランドを「他の資産とどのように分離するのか」が論点である。そもそも「企業ブランドとはなにか」という点に関しては,企業ブランドには消費者が持つ企業イメージなど様々な要素が絡んでおり,分離することは困難である。
 昨今,日本においても国際会計基準を導入しようとする動きがあるが,この点に関しては方向性に変化はないだろう。

司会:商標権の評価について,日本も米国も会計的な考え方が基本的に同じであるとすれば,日米企業間の商標意識の差はどこに起因すると考えられるか。

関氏:歴史的な背景も1つの要因として考えられるだろう。かつての日本の高度経済成長期は,大量生産による価格競争力が競争力の源泉であったように思われる。しかし近年,中国などの新興国などの台頭によってこれが崩れ,競争力の源泉としての比重が相対的に低下してきた。そこで日本企業は,品質などのブランド力によって差異化を図り,競争力の源泉とする「ブランディング」をより重視するようになってきたように思われる。
 一方,欧米企業の場合,伝統的に「ブランド」を競争力の源泉として活用するという意識が高かったように思われる。



第2回CIPOフォーラム座談会(1)関連記事
第2回CIPOフォーラム座談会(2)関連記事
第2回CIPOフォーラム座談会(3)関連記事


座談会の様子
座談会の様子


| このフォーラムについて | INDEX | 日経BP知財Awareness | 産業イノベーション | テクノアソシエーツについて |