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第2回CIPOフォーラム座談会(2)
商標・ブランドの保護には部門を越えた連携が重要

[2008/11/13]


 欧米企業は自社・商品ブランドを保護するために商標に関するあらゆる手段を講じる。日本企業はこの点に関して,欧米企業ほどの積極性を持った日本企業は少ない。CIPOフォーラムはこれら商標に関する諸問題に対し,弁護士,公認会計士,弁理士といった知財の専門家が意見を述べあう座談会を開催した。そこでは,商標の保護には企業内の部門間連携が重要であることが指摘された。

【参加者】(50音順)
三好内外国特許事務所 芦田望美氏
西村あさひ法律事務所 岩瀬ひとみ氏
アーンストアンドヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社 (EYTAS) 大岡考亨氏
三好内外国特許事務所 鹿又弘子氏
西村あさひ法律事務所 木村剛史氏
新日本有限責任監査法人 関 大地氏


司会:日本企業と欧米企業で商標の重要性に関する意識に差があるように思える。この点に関して意見を。

鹿又氏:日常業務で著名商標を保有する欧米企業はブランドに対する意識が非常に高いと感じる。特に技術力よりもブランド価値が重要な経営資源である企業にそのような傾向が顕著であるように思う。常に他社の商標出願を観察しており,権利化を阻止するために積極的に異議申立を行うのはもちろんのこと,他業界の小さな侵害であってもブランド価値を落とすような使用に対しては商標法や不正競争防止法に基づき権利行使してブランドを守ろうとする。商標の類否の判断も日本企業よりも強気の傾向があるようだ。
 商標を登録することはビジネス上の保険としての意味もあるし,商標に象徴される企業の信用を守るという,保険以上の価値がある。商標保護の重要性を正しく顧客に伝えるとともに,知的財産という見えないものの価値を適切に理解してもらうことがわれわれの課題である。

岩瀬氏:欧米企業は,企業ブランドや商品ブランドなどの商標権を財産,資産として認識しているのに対して,日本企業は商標権を“自身のビジネスを保護するためだけのもの”と捉えることが多いなどとも言われている。
 米The Coca-Cola Companyは,特許庁で登録出願を拒絶すべきとの審決がなされた容器の立体商標に関して知財高裁に審決取消しを求め,勝訴した。同社は以前から類似した容器を不正競争防止法によって排除し続け,識別性を高めるように努力してきた。これも知財高裁で評価された点であるが,商標やブランドを重視する企業態度の表れといえるだろう(関連記事)。

司会:この点を日本企業が業務で応用するためにはどうすれば良いのか。

岩瀬氏:日本企業は商標を知財部門が独立して管理しているという印象を受けることが少なくない。企業ブランドや商品ブランドを考える際には,“どのように宣伝していくか”,“どのように売っていくか”といったマーケティング部門の考え方をも踏まえることも重要である。部門間で連携して全社的に対応するのがよいのではないか。

鹿又氏:岩瀬先生が部門間連携の重要性を指摘されたが,確かにその通りである。部門間の連携が取れていないと,企画部門が知財部門と連携せずに商標の出願前調査を行わないままブランドを発表してしまうといった事態に陥りかねない。発表後に第三者の先行出願が明らかになった場合,第三者からの買い取り等で余計なコストがかかることになる。
 昨今,大手企業では知財部門による社内への知財の啓発活動が行われている。しかし,日本企業全体でみると他部門へ知財意識がまだ十分に浸透していないように思う。知財部門の活動が全社的に認知され,日常的に相談がくるようになるには長い時間がかかるようだ。知財部門の地道な継続的活動のほかに,経営者の強力なリーダーシップが必要なのではないか。

司会:米Microsoft社は1999年,ゲーム機『Xbox』の発売に際し,『xbox』の商標を出願していた米XBOX Technologies社と交渉し,2001年に(1)xboxに関する商標権の譲渡,(2)XBOX Technologiesの社名変更,をさせた。コストをかけて徹底してビジネスの障壁を取り除く企業の行動に関して意見を。

鹿又氏:使用したい商標について第三者が商標権を保有している場合,交渉により譲渡してもらうことは日本でも一般的である。当該Xboxの件については,事案の詳細や事件の背景は非常に複雑であり和解条件などは一般に公開されていないため,事件に関する詳細なコメントは差し控えたいが,譲渡交渉の結果として,会社名の変更にまで至ったのは注目すべきことである。将来に禍根を残さないために必要な措置だったのであろう。
 ところで,本件のように,商標に関するビジネスの障害を取り除くことも重要であるが,最終的に取り除くことができないとしても最後まで戦い抜く企業姿勢からも学ぶものがある。
 アサヒビールのロゴマーク事件(東京高裁 平成6年(ネ)第1470号)では,米穀・雑穀の販売を主業務とするアサックスが,自社のロゴにそっくりな「AsaX(アサックス)」というロゴを使用しているということでアサヒビールが提訴して最高裁まで争った。第1審では商標権侵害と不正競争防止法違反で,第2審では著作権侵害を加えて訴えた。ロゴ(外観)は確かに似ている部分もあるが,称呼が顕著に異なり,類似と認めるのは難しい。結果としてアサヒビールの控訴は認められず,上告も棄却された。裁判には長い時間と多額の費用が必要であるが,それでもなお,企業ブランドを守ろうとする強い姿勢を感じる。アサヒビールは,結果として負けたが,社会に対して自社の姿勢をアピールできたと思う。


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座談会の様子
座談会の様子


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