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CIPOフォーラム座談会第2部(2)
ベンチャーは自社知財権の価値を把握した上で業務提携を

[2008/03/13]


 「ベンチャーは自社知財権の価値を把握した上で他社との業務提携などを進めるのが望ましい」知財Awareness編集部が日本のベンチャーのEXITにおける知財の重要性をテーマにした「CIPOフォーラム座談会」を開催した。座談会には弁護士,公認会計士,弁理士といった知財の専門家が参加し議論を展開した。本記事は座談会第2部の内容を掲載したものである。第2部の2回目である今回は,ベンチャーによる自社知財の評価の難しさや特許侵害訴訟などの実務に話がおよんだ。

【参加者】(50音順)
新日本監査法人 今井靖容氏
  西村あさひ法律事務所 岩瀬ひとみ氏
  アーンストヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社(注 大岡考亨氏
三好内外国特許事務所 高橋俊一氏 高松俊雄氏


司会:第1部(関連記事)で大岡氏が指摘した企業体力によって評価が変わってしまうという問題はベンチャーでもあてはまる。ベンチャーの場合,事業化インフラが不足しているため,事業可能性という点で評価すると低くなる。大企業に売却した後に,大企業側で評価すると高評価になる。

高橋氏:われわれは権利を取って“はいお終い”ではなく,特許権の活用までコンサルティングできればと考えている。取得した特許がどれくらい優れているのか,既存特許と比べてどれくらい優位性があるのか,といった評価はわれわれができる。われわれの評価を踏まえた上で提携先を探していくのも1つの手法ではないか。
 ベンチャーの経営者は夢を持っているが,夢だけで他社と提携交渉すると特許の強さや事業計画に客観性がないと判断される。自社の知財の位置付けを明確にした上で提携交渉に臨むのが望ましい。これがベンチャーの知財活用の第1歩ではないか。

司会:上述の場合,ベンチャーは自分のハードルで自社知財を評価しなければならないのか?

大岡氏:交渉は,「ベンチャーの知財が大企業で使われてこれくらいの収益を生む」という自社判断から始まるだろう。研究者が立ち上げたベンチャーなどの場合,自分だけでこういった推定は困難だろう。専門家がサポートする必要がある。
 
司会:米国では企業間の知財ライセンスに関するデータベースがあるそうだが,日本ではどのような動きになっているのか?

大岡氏:日本は米国に比べて相対的にビジネスの手段としての知財ライセンスが活発でなく,情報公開が進んでいないこともあり,誰もが利用出来るようなデータベースは現時点で構築されていないと思う。日本では官主導で進めないとベンチャーキャピタルでも使用できるようなデータベースは構築できないだろう。

司会:知財ポートフォリオの重要性が出たが,顧客にどのようにアドバイスしているのか?

高橋氏:最近は大学からの特許出願が増えている。分野はバイオ・化学・材料などだ。これらの分野は1つの強力な基本特許を取得すれば周辺特許はそれほど重要ではない。一方,情報処理技術などは1つの基本特許だけでは事業化は不可能に近い。基本特許の周辺を特許で固めなければ事業は難しい。大学は特許出願に関する予算が少ないことが多い。そんなときは「周辺特許に関しては提携先を見つけて共同出願してはどうか」とアドバイスしている。ベンチャーも大学と同様である。限られた資源を特許出願に費やしていると事業の進展が難しくなる。適切な提携先企業を見つけて,事業化の過程において共同で周辺特許を固めていくのが現実的である。提携先企業の規模としては,中小企業クラスが理想的だろう。1社と独占的に提携するのではなく,数社と提携する。これらが拡大していくことで標準化の話などに発展する可能性もある。

司会:当該データベースは知財ライセンスのみならず,あらゆる局面で有効なツールになりそうだが,日本で構築する予定は?

大岡氏:アーンストヤング米国本社では,既に自社でデータベースを保有している。日本については,知財ライセンスに関するデータは公開されていないため,欧米の公開情報によるデータにとどまっている。

司会:整備するならばどういったインフラが必要なのか?

大岡氏:実際にライセンスを行っている場合,例えば企業のIR(investor relations:投資家向け広報活動)の一環として,知財ライセンスの条件を有価証券報告書やアニュアル・レポートに盛り込むような施策が必要だろう。このような公開情報が積み重なっていけば,ベンチャーも自社の技術がおよそどの程度の水準でライセンス可能かを予測しやすくなるだろう。

司会:ベンチャーをIPO(initial public offering:新規株式公開)させるまでの交渉や説明の仕方は?

岩瀬氏:ベンチャーにとって,事業計画の策定,ベンチャーキャピタルなどへの事業計画の説明,は容易ではないだろう。ただ,ベンチャーへの投資はリスクを認識した上での投資であるし,ベンチャーキャピタルなどの投資家は自己の責任において技術を判断し投資する。今後はベンチャーキャピタリストが投資したベンチャーの経営などに関わり,積極的に技術の売り込みや応用分野を提案するということもがあってもいいだろう。

司会:ベンチャーにとって特許侵害訴訟や無効になるリスクはどう対処すべきか?

高橋氏:基本的には訴訟を起こす前に自社の特許に問題はないのかという判断をする。特許侵害訴訟のカウンターとして特許無効審判を起こされるからだ。代理人としては国内外の参考書類を勘案し,特許権が無効となることがないようにするのが基本である。それ以上のことは審判を起こされた時点で次の行動を決定する。

岩瀬氏:特許無効審判などを請求されるということは相手の事業展開にとって邪魔だということでもある。それが,M&A(merger and acquisition:企業合弁・買収)などの交渉の糸口になるかもしれない。

高橋氏:その通りである。無効審判についてはピンチとチャンスの面がある。

司会:ベンチャー企業の最終目標はやはりIPOなのか?

岩瀬氏:その傾向が強い。ただ,どのベンチャーもIPOに向いているというわけではない。上場に向く事業と向かない事業がある。向かない場合は,最終的には,EXITとしてはM&Aを考えることになる。一般的に元気のいいベンチャーが上場を目指しているとはいえるだろう。

注)大岡氏の所属するアーンストヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社は,新日本監査法人の関連子会社である。M&Aにかかる様々なサポートサービスを提供している

CIPOフォーラム座談会第2部 (),(
CIPOフォーラム座談会第1部 (),(

座談会の様子
座談会の様子


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