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連載企画(2)知財経営とCIPO 第3回
知的財産最高責任者(CIPO)が担うべきマネジメント機能と必要な視点
タカラバイオ 専務取締役兼CIPO 浅田起代蔵氏に聞く(下)
[2006/09/04]

タカラバイオ 専務取締役兼CIPO 浅田起代蔵氏
タカラバイオ 専務取締役兼CIPO
浅田起代蔵氏
 企業におけるCIPO(chief intellectual property officer:最高知的財産責任者)の必要性が高まる中,すでにCIPOを設置し,高度な経営戦略や知財戦略を実現している企業が現れている。そうした企業の1社,タカラバイオの専務取締役,バイオ研究所副所長でCIPOに就任した浅田起代蔵氏と執行役員・知的財産部長の佐野 睦氏にバイオ産業における知財の重要性と同社が進める知財戦略の概要,CIPOの機能と設置の意義を聞いた。
(まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)


企業風土に合致したCIPO制度
 2006年,当社はCIPO(chief intellectual property officer : 知的財産最高責任者)を新たに設置した。CIPOの設置については社長(編注:加藤郁之進氏)自らが重要性を認識しており,積極的に推進した経緯がある。さらに言えば,知財部門,研究開発部門,事業部門といった部署間の組織的な「垣根」が伝統的に低く,人事面でもローテーション制度の採用など配慮してきた。こうした企業風土上,CIPO制度と設置の狙いは十分に社内で理解されており,組織構造上の親和性も高い。CIPOと既存部署間におけるシナジー(相乗効果)の作用も大いに期待している。
 当社におけるCIPOの役割・機能では,R&D活動と知財活動の均衡化,経営戦略に基づいたマネジメントの統括が特に重要である。当社のような研究開発型の企業では,イノベーション(技術革新)の創造と業績の向上の両立が不可欠である。そのためには経営の効率化と迅速な意思決定に努めなくてはならない。

図1:タカラバイオにおけるCIPOの位置付け
タカラバイオにおけるCIPOの位置付け
出所:タカラバイオ提供の資料より抜粋。

CIPOの主要機能は中長期的観点によるR&D戦略と知財戦略の立案

執行役員・知的財産部長 佐野睦氏
執行役員・知的財産部長
佐野 睦氏
 CIPOの職務範囲は「経営判断を要するレベル」の案件を対象とし,知財部門の実務的なマネジメントは従来同様に知財部長が掌握する。具体的には,中長期的な研究開発戦略と知財戦略の立案が主要業務になる。当社では社長がバイオ研究所の所長を兼務しており,従来から研究開発活動と事業戦略の有機的な連携を実現してきた。私も同研究所の副所長と米国子会社のCSO (chief science officer)を兼務している。これらの職務範囲で得た見識を反映しつつ,CIPOとしては研究開発活動と事業戦略の連携を反映した知財戦略の構築を進めていく。
 CIPOの位置を生かした事業テーマとしては,(ア)知財を活用した事業戦略の立案,(イ)研究開発戦略における更なる連携の促進,(ウ)研究開発活動の収益化,を重視している。バイオ分野の技術は未知の領域が多く潜在的な成長可能性が高い反面,研究開発活動には不確実要素を数多く伴う。事業化について更に高いリスクが存在し,中でも医療関係の場合は臨床試験などによって時間と金銭の両面で莫大なコストを要する。当社では定期的に研究開発部員,事業部員,知財部員が一堂に会し,技術開発のロードマップに基づいたプロジェクトを検証する審議会を,必要に応じて随時開催している。これに加えて,実務担当者が率直に意見交換する場としての現場間ミーティングを週1回のペースで定期的に設けている。
 当社における研究開発活動の最近の傾向を見ると,社内だけで独自に行う活動よりも他の企業や研究機関との共同研究開発の機会が増えている。こうした「オープン・イノベーション」の相手は公的な研究機関や大学の医学部から民間企業と様々であり,日本だけでなく欧米,アジア圏との連携も年々増加する傾向にある。

「知財ガバナンス」の徹底もCIPOの重要な課題
 経営と知財の有機的な連携という観点からは,コーポレート・ガバナンス(企業内部統制)に関連した「知財ガバナンス」の充実に着目している。リスク・マネジメント,あるいはコンプライアンス(法令遵守)といった側面から,「知財に関するマイナス要素をいかに低減し経営の効率化を図るか」が知財ガバナンスにおける最重要の課題になる。
 研究開発型の企業として当社では,共同研究開発時の秘密保持契約(NDA)の締結の徹底,研究開発現場におけるラボ・ノートの記録・管理の厳守などを,従来の知財活動の中で徹底してきた。また,研究開発活動で得た細胞やベクター(分子,媒介体)のサンプル,使用したツール一式,試料などに加えて,研究データなどの情報を含む要素を知的財産として認識し,厳重に管理してきた。
 今後,オープン・イノベーションの増加,研究開発活動や事業活動の多極化・グローバル化に対しては,従来からの知財実務的な活動を引き続き進めていきつつ,トップ・マネジメントを発揮し,タカラ・バイオ・グループ規模の統一的な管理体制の構築と均質化の実現を目標に定めている。その一方で,各部門の実務現場あるいは拠点の所在地域における制度的な条件や周辺の事業環境などに最適化した,いわば「ローカライズした」マネジメントも重要なカギとなる。こうした局面では経営陣による諸制度の理解度・把握度がマネジメントを大きく左右する。CIPOとしては,知財権や契約に関する法制度などに加え,研究開発活動に関する経営的要素として財務投資制度や税制に相応の知識を備えておく必要性を感じている。



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